本と映画と音楽と…withシャングリラ活動レポート

老後人生を親父バンド「シャングリラ」で送るアキラの気ままなブログ

Vol. 1  傲慢と善良(朝日文庫) 辻村深月 

 お勧め対象  20代~40代 恋愛中や恋愛したい方  結婚1~10年目位の方

「誰かが私のマンションにいるみたい・・怖くて家に戻れない 架くん 助けて!!」こんなミステリー仕立てでこの小説は始まる。 架と真美は今 流行りのマッチングサイトで出会い1年近く先であるが結婚式場の予約までしてある婚約者同士である。 そんな彼女の家に地元にいた時のストーカー(だと思われる)男が侵入しているかもしれない。 この不安を取り除くべく二人は結婚式まで架(かける)の家で同棲を始める。  ところが1か月近く経ったある日 彼女は忽然と姿を消した。ストーカーに拉致されたか もしかしたら最悪の状態に陥っているかもしれない。架は仕事の休みを使い真美の実家のある前橋へと向かう。そこから彼の犯人探しが始まるのだが・・・

実はこの小説の本質にあるものはこの謎を解いていく最中に出会う、彼女の両親、結婚相談所の女所長(真美は東京に出る前地元で母親の勧めにより婚活をしていた)、同僚そして紹介所で紹介された男性たちとのやりとりにより、架がいかに傲慢であり それを隠すように善良な振りをして異性と付き合っていたかを思い知る所にある。また失踪した真美のほうもおとなしく控えめで目立たない女性像でありながら異性に対する傲慢さや狡さを持ち合わせていたのだった。

恋愛と違い結婚を前提として異性を見るとき「相手の質、自分との釣り合い」を見てしまう。本書の中で相談所の所長が言う「ここに来る方は自分を卑下しているにもかかわらず自分の価値を高く見積もり相手の価値を低く見積もる傾向にある」この言葉に恋愛のキーポイントがある。この小説の主人公2人も30代である。 架は自分で独立して仕事をしているしルックスも良くこれまで女にもててきた。だが結婚となると「今 一つピンとこない」そのピンが何かをわからないままできた。真美の方も地元ではお嬢さん学校といわれる大学を卒業してお見合い相手にも(実は良い人と巡り会っていたのだ) なのにちょっとした所を減点して対象相手を「ピンとこない」と考え 断っていたのである。

人と人をつなぎ 相手と寄り添って生きるには自分の考え方を変えなければならない。ではどんな風に変えるべきなのか?  この小説はその答えを読者に示唆してくれる。恋愛や結婚を考えている方、結婚生活にちょっと不満が生じてきた方、そんな方に是非読んで頂きたい小説である。なお この記事を書いている現在 文庫本ランキングで当書が1位を獲得していることから多くの方に支持されていると思われる。